眼瞼けいれん・ボトックス
眼瞼けいれんとは
「けいれん」という病名がついているので、何となく「ピクピクする病気」と思われるでしょうが、必ずしもぴくぴくはしません。不要な瞬目が増える、自由に目を開けることができないことが「けいれん」の正体です。
「眼瞼けいれん」は、自由に目が開けにくくなったり、瞬きが増えたりする、いわば目の開け閉めのスイッチが故障した状態です。そして、「まぶしい」、「目が乾いた感じがする」、「目をつぶっているほうが楽」あるいは「自然と両目あるいは片目が閉じてしまう」といった自覚症状で受診します。この病気の大半は「ドライアイ」と間違えられていますが、ドライアイの治療をしても一向に良くならないのが特徴です。
瞼のこうした運動障害に加えて、まぶしい、目の周辺が不快、痛い、目が乾く感じなど感覚過敏があるのも特徴です。さらに抑うつ、不安、不眠など精神症状を持つ人も半数近くあり、うつ病などと間違えられることもあります。治りにくい病気で、40~50歳以上に多く、女性は男性の2.5倍もかかりやすいものです。目がまったく開けられないほど重症な例は少ないですが、一見しただけでは分からないような軽症例を含めると、日本には少なくとも30~50万人以上の患者さんがいると推定されます。
眼瞼けいれんの重症例では、開瞼不能であり、上下の眼瞼を硬く閉じ、まぶたの周囲や眉間にしわを寄せる特有な顔貌をしています。多いのは軽症、中等症例で、表にみられるさまざまな自覚症状があり、それが常時気になって集中できない、などの不快な症状が強く、頑固に続きます。また目が乾くと訴える例も多く、その他の訴えも眼表面障害のものに類似しているため、しばしばドライアイと診断され、治療されています。ほかには眼精疲労、自律神経失調症、更年期障害、神経症などと診断され、診断もつかぬまま引きこもっている例もかなりあると推定されます。通常のドライアイ患者ではみられない日常生活上の特徴は、自身の移動に関することを考えてみると分かります。歩行中に人や物にぶつかったりぶつかりそうになる経験をしたり、車や自転車で走行中の事故も少なくなく、運転を諦めている人も多くいます。
発生の要因について
多くの場合は原因が不明ですが、安定剤、睡眠導入薬、抗精神病薬の連用や化学物質への曝露が原因や誘因になっている場合は、可能な限りこれらの薬の服用を中止し、曝露しないようにすることが大切です。 しかし、なかなか薬を中止できないこともあります。また、根治的に治す方法はありません。
症状について
- 眩しい
- 目を閉じている方が楽
- 目が乾く
- 目がしょぼしょぼする
- まばたきが多い
- 自分の意思でうまく目が開けられない
- 歩行中に人や物にぶつかる
治療について
最も用いられる対症治療(病気自体を治すことはできないですが、症状を改善する治療)は、眼周囲の皮膚にボツリヌス毒素Aを製剤にしたものを少量注射して、目をつぶる力を弱める方法です。効果は2~4か月持続します。ほかには、クラッチ眼鏡、眼瞼の手術(いろいろな方法があります)、薬物療法がありますが、いずれも補助的な治療です。難治ですが、5%前後の例で改善傾向を示すとのデータもあります。なお、抑うつ感があると症状が悪化するので、心の安定が必要な病気でもあり、自分自身でのメンタルケアは必要です。そのためにも、病気に対する理解が非常に重要で、治そう治そうと焦るのは禁物です。
内服治療 対症療法になります。漢方薬の処方等になります。ボトックスの治療に抵抗がある方も入りやすい治療になっております。
ボトックス治療
対症療法になります。2ヶ月から4ヶ月毎に定期的に行うことが多いですが、まれに半年や一年で希望される方もおります。対症療法になりますので、期間に決まりはなく、ご本人様と相談して行っております。当院でのボトックス治療は、患者様の状態をベストにもっていくために、初回のボトックスの量から、注射後の状態を確認して、毎回量の調整をしており、対症療法だからこそ、きめ細かい注射で、よりよい日常生活をおくっていただけるようにしております。
ボトックス注射費用
ボトックス注射(1割負担) 5200円
別途、診察検査代。
手術による治療 治療の第一選択はボツリヌス毒素注射ですが、効果が少ない場合には手術を併用することがあります。
手術には、眼瞼下垂を合併しているときには眼瞼下垂に対するを行う方法や、眼輪筋、皺眉筋、鼻根筋などの筋肉を切除し目を閉じようとする筋の力を減弱させる方法があります。
手術治療により、眩しさなどの症状を完全にとることは難しく、ボトックスの注射をしなくて済むようになることは難しいですが、開けにくさは改善できることが多いです。眼瞼下垂手術についての詳しい話はこちら
ボトックスの効果の少ないかた、ボトックス注射が苦手なかたは、一度ご相談ください。